社交不安障害(SAD)
自分が人からどのように見られているかは、ある程度誰でもが気になることです。人前に出てスピーチをしたりプレゼンテーションをしたりということに対して緊張してうまく力を発揮できない、いわゆるあがり症の体験をした方も多いと思います。
社交不安障害はこうした誰にでも起こりうることに対して、過度に反応してしまう病気です。
その症状は震えや腹痛、顔が真っ赤に紅潮したり、冷や汗が大量に流れたりします。さらに程度が進むと、症状がまた出てしまうことを恐れるあまり、人が集まるような場所に行けなくなったり、発表やプレゼンテーションなどを避けるようになったりして、学業や仕事ばかりではなく、友人関係や異性関係なども正常に続けられず、生活に支障をきたすことになります。
社交不安障害の症状
症状としては、下記のようなものが多くみられます。
- 人前に出ると震えてしまう
- 顔が真っ赤になってしまう
- 人前で字を書こうとすると手が震えてまともに書くことができない
- 乾杯の音頭をとろうとするとグラスが震えてこぼしてしまう
- 人前でなにかしようとすると冷や汗が流れる
- 症状がまた出るのではないかと思うと人前に出る前から腹痛や頻尿が起きる
など
また、あらかじめその状況を避けるようになり、行動範囲は狭まり、日常生活に影響がでます。
社交不安障害の治療
現在では薬物療法と心理療法(精神療法)の両面から治療のアプローチが行われるようになっています。
社交不安障害の症状に少しでもお困りの方は、お気軽に当院にご相談ください。
全般性不安障害(GAD)
精神病理学的には、不安は「対象のない恐怖」と表現されています。だれもが、何だかはっきりしないけれど安心できない、落ち着かないといった感情にかられることがあります。そのこと自体は普通にあることです。
全般性不安障害は対象がはっきりしないのに、常に誰もが感じたことがある以上に強い不安を感じてしまい、それが長期間続くため身体や精神に様々な症状があらわれることになる疾患です。英語のGeneralized Anxiety
Disorderの頭文字をとってGADと呼ばれることもあります。
発症率は女性、特に若い女性に多く、男性の2倍ほどになると言われています。
原因ははっきりとしていませんが、脳内の神経伝達物質の働きが何らかの事情によって阻害されている、遺伝的な要素によってうまく働かないなどが考えられ、また心理的な要因としては、無意識のうちに抱えている葛藤などがストレスとなっていると考えられています。
全般性不安障害の症状
全般性不安障害の特徴は、不安の対象が特定のものや事柄ではないというものです。そのため、起こりえる症状も患者様によって様々です。
常に不安を感じている、または不安を感じる日の方が多いときは、全般性不安障害を疑います。
全般的不安障害であらわれる顕著な症状としては、過度の緊張、感情が過敏になる、集中できない、こころが落ち着かずそわそわしてしまう、何か刺激があったとき過剰に反応してしまう、こころにぽっかりと穴が空いたようになるといった心の症状のほか、筋肉の緊張によって頭痛・肩こりがとれない、眠れない・眠りが浅いなどの身体的症状があります。
全般性不安障害の治療
全般的不安障害の治療にも心理療法(精神療法)と薬物療法があります。
心理療法では、患者様が抱えている漠然とした不安や恐れを共感者の立場からうまく引き出し、患者様とともに解決策を導きだし、うまくコントロールしていけるようにする支持的精神療法や認知行動療法などが有効と考えられています。
現実に起こっている不安に対しては薬物療法を行います。
強迫性障害(OCD)
でかけるときに、ガスの火を止めただろうか、玄関の鍵をかけただろうかと心配になるようなことは一般的によくあることです。しかし、その心配が病的に強くなり、日常生活にもさしさわりがでるようになってしまうと、強迫性障害となります。この疾患では、自分でもこだわりすぎだとわかっていても、どうしてもこだわらずにいられなくなり、心がとらわれてしまったり、何度も何度も同じ行為を繰り返してしまったりといった症状があらわれます。
強迫性障害は英語のObsessive Compulsive Disorderの頭文字をとってOCDと呼ばれることもあります。
19~20歳ぐらいをピークとして、比較的若い世代に多くみられる疾患で、原因ははっきりしていませんが、脳内の神経伝達物質の異常があり、ストレスなどの社会状況に反応して発症すると考えられています。
心配性と片づけて性格的な問題としてしまうケースも多いのですが、脅迫性障害は治療することによってしっかりと治る病気です。気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。
主な強迫観念と強迫行為
脅迫性障害では、心が何かにとらわれてしまって払いのけることができない強迫観念と、不安にとらわれて何かの行為をすることを止めることができない脅迫行為という症状が2本の柱となっています。
強迫観念や脅迫行為の代表的なものとしては、以下のようなものがあります。
- 不潔恐怖と洗浄:洗っても洗っても汚れているような気がしたり、細菌がついているような気がしたりして、手を洗い続けてしまう。電車のつり革や手すりなどが汚れている気がして触れないなど。
- 加害恐怖:何もしていないのに、誰かを傷つけてしまったのではないかという不安がつきまとい、周囲の人に相談したり警察に訴えたりする。また報道されないかどうか、新聞やテレビ、ネットのニュースなどを気にする。
- 確認行為:出かけるときに、ガス栓などの止め忘れや、スイッチの消し忘れ、鍵のかけ忘れなどが異常に気になり、何度も何度も確認してしまう。ときには駅から引き返して確認するようなこともある。
- 儀式行為:なにかをするにあたって自分で決めた手順を守らないと不幸が起こるなどといった観念にとりつかれ、必ず同じ手順や方法で行おうとする。
- 数字へのこだわり:4や13などといった不吉といわれる数字、7など幸運といわれる数字に異常なほどこだわる。何かをするときにこだわりの数字の回数だけ繰り返すなど。
- 配置や順番へのこだわり:ものを置く場所、置く順番などに整理整頓というレベルを超えてこだわりを見せて、いつも同じでないと気がすまず不安になる。
強迫性障害の治療
強迫性障害の治療も、心理療法(精神療法)と薬物療法の二つのアプローチがあります。
薬物療法としては、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの分泌バランスに大きくかかわると考えられているところから、SSRIというセロトニンの働きを増強するタイプの抗うつ薬・抗不安薬が有効とされています。この薬は副作用も少なく長期使用にも適していますが、即効性ななく、効果があらわれるまでしばらくかかり、また数か月服用を続ける必要があります。