過敏性腸症候群(IBS)とは
学校や会社に行こうとする時、通勤電車に乗っている時、なんらかの緊張やストレスを感じた時に、お腹が痛くなり下痢や便秘を起こしてしまい、排便すると症状は軽快する。症状が続くのに検査をしても胃や腸に異常が見つからない。こういった状況の方は過敏性腸症候群かもれしれません。
腸が蠕動運動(ぜんどううんどう)を使ってだんだんと食物の中の水分と栄養を取り込みながら、不要物を便として身体の外に送り出す仕組みには、脳や神経の働きが大きくかかわっています。過敏性腸症候群では、ストレスや緊張によって脳から腸へと送られる信号に乱れが生じてしまい、そのことによって腸の蠕動運動が過剰になったり、低下してしまったりして腹痛、下痢、便秘などが起こる疾患です。
20~30代ぐらいの、働き始めから働き盛りにかかる世代の方に比較的多く、有病率は10人に1人から5人に1人程度という疾患で、英語の病名であるIrritable Bowel Syndromeの頭文字をとってIBSといわれることもあります。
過敏性腸症候群の症状
過敏性腸症候群には、下痢型と便秘型、それを交互に繰り返す混合型などがあります。
通常、胃である程度消化され小腸から大腸、直腸、肛門へと蠕動運動によって移動していく食物には水分が多く含まれています。また、腸の活動として、さらに栄養分などがとりこまれると同時に、余分な水分もだんだんと吸収されて、適度な硬さの便となり排泄されていきます。
ところが、過敏性腸症候群の方がストレスや緊張などの影響を受けると、この腸の運動と水分を吸収する働きのバランスが崩れてしまいます。
下痢型の場合は、ストレスによって腸が過敏に運動しすぎるため、通常はゆっくりと水分が吸収されていく過程が早送りされてしまい、水分が多く残った状態になります。これによって軟便や下痢がおこります。
一方、便秘型の場合は、ストレスによって腸の運動が必要以上に低下してしまうため、食物の移動がゆっくりになって腸内に溜まりすぎると同時に、過剰に水分が吸収されて便が硬くなることで便秘を起こします。
混合型はこの下痢と便秘を交互に繰り返すタイプで、このほかに分類不能とされるケースもあります。
一般的に、下痢型は男性に多く、便秘型は女性に多いと言われています。
過敏性腸症候群になると、通勤や通学などの外出、、会議や発表などの場面で腹痛を起こしトイレに行きたくなり、この腹痛を恐れて、だんだん積極的な活動ができなくなったり、時には外出をためらってしたりするなど、日常生活にも影響がでてきます。
過敏性腸症候群は、適切な治療を受けさえすれば治る病気です。症状がありましたら、お早めにご相談ください。
過敏性腸症候群の治療
治療は、下痢型、便秘型、混合型などの病態にあわせて、食事療法、運動療法などで生活環境を見なおすとともに、薬物療法を行います。